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最高裁判所第二小法廷 平成4年(行ツ)183号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

一  国税通則法五七条による充当は、行政庁である税務署長等が所定の場合に一方的に行うべきものとされ(同条一項)、その結果、充当された還付金等に相当する額の国税の納付があったものとみなされることになるものであり(同条二項)、また、税務署長等は、右充当をしたときは、その旨を相手方に通知するものとされている(同条三項)。このような実定法規の定めからすると、右充当は、公権力行使の主体である税務署長等が一方的に行う行為であって、それによって国民の法律上の地位に直接影響を及ぼすものというべきであり、同法七五条一項にいう「国税に関する法律に基づく処分」に当たると解するのが相当である(なお、地方税法一九条九号、同法施行規則一条の七第四号参照)。

また、国税通則法三七条による督促は、滞納処分の前提となるものであり、督促を受けたときは、納税者は、一定の日までに督促に係る国税を完納しなければ滞納処分を受ける地位に立たされることになるから(同法四〇条、国税徴収法四七条)、右督促も、国税通則法七五条一項にいう「国税に関する法律に基づく処分」に当たると解するのが相当である(なお、地方税法一九条二号参照)。

二  原判決は、右と異なり、右充当及び督促がいずれも「国税に関する法律に基づく処分」に当たらないとした上、本件各充当及び本件督促についての審査請求を棄却した各裁決の取消しを求める本件各訴えを訴えの利益を欠くから不適法であるとして却下した第一審判決を支持しており、この点で法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。

しかしながら、本件記録によれば、上告人が右各裁決の取消事由として主張するところは、結局、その各原処分である本件各充当及び本件督促の違法をいうにすぎないものであって、上告人の本件各請求は、主張自体理由がないことが明らかである(行政事件訴訟法一〇条二項)。そうすると、本件各請求は棄却を免れないところであるが、不利益変更禁止の原則により、上告を棄却するにとどめるほかなく、結局、原判決の前示の違法は、結論に影響を及ぼさないことになる。

また、原判決に所論のその余の違法はなく、論旨はいずれも採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官藤島昭 裁判官中島敏次郎 裁判官木崎良平 裁判官大西勝也)

上告人の上告理由

一、二審は、一審の判決理由をすべて踏襲して一審と同じ判決をした。

二、上告人の主張(控訴の理由及び答弁書に対する反論書)に対して何も審理をしないで、被上告人及び、地裁の判断をそのまま支持した二審判決は、民事訴訟法一二七条に違反しているため、同法三九四条の上告理由並びに同法三九五条一項六号の絶対的上告理由にあたる。

三、①、二審は、充当督促は「訴えの利益」を欠くものとして一審の訴訟判決(却下判決)どおりの判決をした。

②、最高裁昭和六三年二月一九日第二小法廷判決(税務事例二〇巻五号一六頁)は、国税通則法五七条に基づく充当処分の適否が争われた事案に関し、右、充当処分は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると判断している。

③、因って、二審の棄却判決は最高裁判例に違反するものとして違法であるから、民事訴訟法三九四条及び民事訴訟規則四八条の上告理由となる。

④、二審は成田税務署長の充当及び督促は、いずれも審査請求の対象となる国税に関する処分とはいいがたいと判断しているが、国税通則法七五条一項は国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に掲げる不服申立てをすることができる。と記載されている。同法同条同項一号の税務署長がした処分であるから税務署長に対して異議申立てした。そして同法同条三項及び五項により審査請求をし、被上告人は審査請求の対象となる国税に関する処分として取り上げているから、一審二審の訴訟判決(却下判決)は違法であるので民事訴訟法三九四条の上告理由となる。

四、一審の判決書は、一請求原因4(二)で右各更正はいずれも違法であるからと記載しているが、更正処分に対する審査請求の裁決に瑕疵があるので違法な裁決による原処分(充当及び督促処分)を維持した裁決は違法であるというのが、上告人の主張である。

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